2008年早稲田大学WISPJ国際シンポジウム
国際シンポジウム「地球温暖化がアジア諸国に及ぼす光と影をみる」
概要
(1)「アジア地域への温暖化影響」
講演者:三村信男(茨城大学地球変動適応科学研究機関機関長)

三村信男教授
第4次IPCCレポートに基づく温暖化がアジア地域へ及ぼす影響について、現状と予測モデルを紹介し日本の対応策について講演がなされた。
三村教授はその中で、温暖化の進行を完全に止めることは不可能であるから、進行を危険な水準以下に抑えるという目標を設定し、様々な悪影響に対しては保険や社会的セーフティネットワークを考えるべきと述べ、また温暖化対策では緩和策と適応策という二つを用意し、開発途上国に関しては、世界的気候変動のもとで、持続可能な発展が保障できるようなインフラや社会システムをどう形成していくかということが課題になってくると述べた。
(2)「温暖化対策のアジア諸国への副作用」
講演者:西宮 洋(国連環境計画アジア太平洋地域事務所UNEP/ROAP次長)

西宮洋氏
西宮氏は、地球温暖化がアジア諸国に及ぼす副作用の要因、また地球環境問題の特徴と対策
について講演がなされた。
そこで、現在の地球温暖化対策というのは、あくまでも先進国主導のもので途上国はなおざりにされている現状を、バイオ燃料などを例に説明がなされ、この先進国と途上国とのギャップを埋め、共通認識を持って取り組むことの重要性が強調された。
(3)「温暖化対策のためのわが国の国際協力」
講演者:谷津龍太郎(環境省大臣官房審議官)

谷津龍太郎氏
実際に国際交渉の場で活躍している谷津氏より、これまでの世界の環境会議の流れ、そして京都議定書に則った世界規模の環境対策を加速させるための日本の役割についてVTR講演がなされた。
そこで温暖化対策のプラス面(持続可能な開発)、マイナス面(先進国と途上国との温暖化対策の差異)を吟味し、国際的取り組みを進めていく必要性を述べた。
(4)「アジアのエネルギー事情と温暖化対策」
講演者:工藤拓毅(日本エネルギー経済研究所地球環境ユニット統括研究主幹)

工藤拓毅氏
アジアエネルギーの事情という観点から、現状報告と今後の国際的な温暖化対策の捉え方をエネルギー経済研究所のアウトルックを基に講演された。
アジア地域の爆発的エネルギー需要の増加に伴う、化石燃料や電力消費等の環境課題解決には、先進国と途上国双方にとってインセンティブになる枠組みの工夫が必要であると述べた。
(5)「アジアの食糧・水資源等(市民生活)への温暖化対策の影響」
講演者:井田徹治(共同通信社科学部環境・開発エネルギー問題担当記者)

井田徹治氏
井田氏の講演では、温暖化対策の食糧・水資源への影響を、バイオ燃料開発を中心に説明がなされた。
その中で温暖化の解決には、代替エネルギー推進に一辺倒になるのではなく、むしろエネルギー効率性の向上に努めていくべきであり、環境と開発の問題を考える究極の問題は、世界全体の財産というものをどう国際社会として、適切に管理をしていくかというところに帰着するのではないかと述べた。
(6) 「アジアの森林開発と温暖化対策」
講演者:Harry Surjadi (インドネシア・ジャーナリスト)

Harry Surjadi氏
Harry氏は温暖化対策によるインドネシアの森林開発の現状と影響について講演が行われた。
温暖化対策として需要が高まっているバイオ燃料生産のためのパーム農園の拡大が、逆に大規模
な森林火災や大気汚染に繋がっていることが説明され、その対策として、森林政策について先進国・途上国ともに気候変動議論を国連総会と関連づける等して見直しを計るべきであると論じている。
(8)パネルディスカッション
テーマ:温暖化問題をともに乗り越え、日本とアジアの持続可能性を目指す
| コーディネーター: | 松岡俊二(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授) |
| パネリスト: | 西宮洋 Harry Surjadi 井田徹治 太田宏(早稲田大学国際教養学部教授) Maricor Muzones(地球環境戦略研究機関(IGES) 研究員) |

パネルディスカッションでは、アジアにおける途上国と先進国との温暖化対策に関する問題と解決策について協議がなされた。
討議では、以下の3点がまとめられた。
・干ばつなどの温暖化の直接的な負の影響だけではなく、温暖化対策としてのバイオ燃料の開発のための森林伐採といった間接的な負の影響にも注目する必要があるという点である。
・温暖化への適応策研究は、社会システムのあり方研究も含め、温暖化研究の中で最も研究が遅れている分野であるという認識の基、途上国の社会、歴史、知識などを踏まえた社会的能力の形成を目的とした包括的なプログラム・アプローチとして行うことが重要である。
・日本の途上国への開発援助を、従来型の都市化支援中心のものから、温暖化対策を正面に掲げた開発援助への転換をするべきであり、新たな日本の開発援助のあり方を構想する必要があるという点。
今回のシンポジウムでは、国内・外問わず多くの皆様にご参加いただきました。
今後とも早稲田大学WISPJでは、「政治的意思決定とジャーナリズム」という観点から研究を進めて参りますので、宜しくお願い申し上げます。

